京大病院の調剤誤りによる死亡事件
医療事故関連のニュースがニュースが最近多いです。茨城県水戸の済生会病院では手術中の患者の鎮痛剤として投与されるモルヒネが誤った投与量で投与され心配停止となりその後死亡するというニュースがリリースされていました。先日も(というよりも結構前ですが)、レセプト点検を終えて帰宅しビールを飲みながらネットでニュースをちょろちょろと見ていますと京大病院にて今年の8月28日に医師の指示の元でセレンという微量元素を製剤した注射薬を9月26日患者が自宅で点滴投与した所、通常の700倍以上の濃度にて誤調剤されており患者である60代の女性が死亡するというニュースが流れていました。ニュースでは病院は非を認めており、院長が謝罪会見を開いていましたが・・・
どうやら、京大病院はこの患者以外にも10代の患者から同様のセレンの注射液の色が違うとの連絡を受けていたようで、結果として短期間に2件もセレンの注射製剤の誤調剤が発生していたということになります。
そもそもセレンとは?
このニュースに触れたとき、自分は何個も???が付きました。とりあえず、患者が誤った製剤で死んだのはわかったけどセレンて何?微量元素? 家で使用していた?どんな状況で? そしてニュースを見る限り注射じゃん? それを家で使ってんの? 誰が管理してるの(・・? 最後にまた医療事故?病院は大変だな・・ といういくつもの疑問符がついた感じでこのニュースに接していました。
で、googleで検索をかけてみるとその時はホットワードであったのか、京大の医療事故関連のニュースが出るわ出るわ。ですが、事故が発生した正確な背景を報じられたニュースは少なかったように感じます。実際に僕が感じた疑問を解消してくれるようなニュースサイトはありませんでした。
「セレン」と検索をかけてみると、人体を構成する元素の中でも極めて少量しか存在しない微量元素であり不足したりしたら心筋症の一種でもある克山病に罹患することもあるとの事。しかし、現代に生きる日本人にとっては不足よりも過剰を懸念したほうが良い物質であり、必要量と中毒量の差も小さいことからサプリメント等で摂取するのは注意が必要な物質とされています。しかし、それでも「全く食事をとらない」人や「90歳以上の人間」は欠乏症を注意すべきであるとの事。どうやらこの辺に今回のニュースの背景がありそうです。
患者が置かれている背景に目を向けると・・
在宅での注射薬としての使用、という点からこの患者は何らかの理由で食事にて栄養を経口摂取をしていなかった患者と見受けられます。ガンや消化器の疾患で口から食事をしての栄養摂取ができない患者さん。そのような方々は普通にいらっしゃいます。そしてその方法は一般的に「静脈栄養法」と呼ばれ「中心静脈栄養」と「抹消静脈栄養」という方法に分けられます。細かな解説は避けますが「中心静脈栄養」は長期的・高カロリーな輸液を投与することが出来、一方「抹消静脈栄養」は比較的に短期・中心静脈栄養と比べると低カロリーな輸液を投与することを目的としています。
患者さんが置かれている状況によってどちらかが選択される訳ですが、セレンのような微量元素を投与されていたことからこの患者さんは「中心静脈栄養」によって輸液を投与されていたと推察されます。上記したようにセレンは投与量と中毒量が近しく多量に摂取することは望ましくない元素です。慢性的な過剰症は皮膚症状・脱毛・抹消神経障害等が引き起こされることが報告されており、グラム単位での摂取過剰は腎不全・心筋障害・呼吸困難に陥る可能性もあるとの事。。。扱いには重々気を付けなければいけない物質なのです。
まあ、ニュースの詳細・背景は全て明らかになる訳もないので推測ですが、私も医療人の末端にいる人間として医療不信を助長するような事がくれぐれもないよう他山の石としなければいけないと思いました。